漢仁帳

人材育成プロトレーナー漢仁のブログ

小学生が初めて書いた「両親への手紙」

みなさん!こんにちは。漢仁です。


今日は、小学生向けの体験学習で「夏休み子ども合宿!初めてのお泊まり」の中で起きた心温まるエピソードを、10年くらい前のお話ではありますが、想い出を紐解きながらお届けしたいと思います。


参加者は、全国から集まった小学1年~6年生までの約20名、ボランティアスタッフ4名と、トレーナー2人、看護師1人、カメラマン1人ぐらいだったと思います。

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ただこの企画は「みんなで楽しく旅行に行きましょう」というだけではなく、行程の中に、チャレンジして欲しい課題がいっぱい組み込まれた体験学習ツアーなんです。



そのことを知っているのは、我々スタッフ側と参加させたいと申し込みを決めた親のみで、子どもたちはこれから何が起こるか何も聞かされてません。

 

親もプログラムの概要は事前説明会で説明を受けてますが、詳細は聞かされていません。


皆さんご存知の日本テレビ「はじめてのおつかい」という番組と同様に、親子にとって一番最初の試練になるのが、家を出て親と離れて子どもが独りになるシーンですが、この合宿でも宿泊地の最寄り駅の改札口まで親が送って来て、スタッフに子どもを預けてそこでお別れするようにしています。

 

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多くの場合、改札を出た辺りのちょっと広くなったところを集合場所にしています。

この時点で、子どもを残して立ち去ることが居たたまれずに涙をこらえるシーンも見受けられます。

 

毎回ご両親の方が戸惑われてオロオロされる場合が多く、お別れしてからも心配で何度も何度も振り返ります。

 

子どもも親がいなくなる時には、ほとんどの子が立ちすくんでいます。


それもそのはず、お見送りのルールとして事前に「子どもさんがスタッフに引き渡された後はお見送りなさらないようにお願い致します」とお願いしています。

 

子どもの気持ちの切り替えを促すためです。



親も初めて子どもと離れて数日を過ごすから当然なんですが「あるべきものがない」ような「急に心にぽっかり穴が開いたような気持ちになる」そうです。



小学6年くらいの女の子が一旦離れた親のところへ戻り「恥ずかしいから泣かないでよ!」と親に向かって怒っています。自分も涙目になっています。


親と離れる寂しさよりも、周りの目を気にする年頃なんですね。

 

ただ自分も親と離れてから、段々無口になって周りを受け入れない態度になってしまっていることに気がづいていません。


寂しさに負けないようにしようと気を張れば張るほど周りを受け入れられなくなるんですね。「負けるもんか!私は一人で大丈夫!」って自分に言い聞かせているようです。


彼女の名前は、和泉翔子ちゃん。小学校6年生です。今回の主人公の一人です。



さて、この合宿のプログラムの中に「弱者を守る」というテーマを設けています。

学年の上の子が下の子を守る役割を与えます。


どのプログラムに対しても、要点を説明する際は直接私から話します。

個人的に呼び出して1対1で説明する場合もありますし、グループリーダーだけを数人呼び出す場合もあります。


今からやることの説明、その中で気を付けることや、やり方など、みんなに教えてあげて欲しいことを説明します。そして「絶対にしてはいけないこと」は念を押して伝えます。


そのしてはいけないことは「決められたルールは必ず守る」という合宿の約束事に基づいているので絶対です。


上の子から下の子に説明してもらうことで「もし放って置いて、この子に何かあったら⁉」という責任感を持ってもらいます。


この「グループ連絡」のみんなにちゃんと伝えるという作業が上級生としての責任感を驚くほど成長させます。

 

ビジネスの世界もそうですが、言ったのに言うことを聞いてくれないというのは、リーダーシップ研修や、中間管理職研修でも扱うテーマです。

 

どんな言い訳も聞き入れられることなく、結果で判断される部分があるという厳しさを学びます。


とは言え、低学年の子は親や学校の先生以外から「~しなさい」と言われることに抵抗を持ちます。


年齢や学年は離れていても「同じ子どもなのに偉そうに!」って思うみたいで・・・

命令されるのが嫌なんですね。

 

わざと天邪鬼な態度をして、注意したことをわざわざやる子どももいます。


では、言うことを聞いて欲しかったらどうすればいいのか?

これも上級生にはいい勉強です。


答えは、命令ではなく「一緒にやろう!」「みんなでやろうよ!」という協調です。

 

そして低学年の子が同じように出来たら「凄いじゃない!ちゃんと出来たね!」と褒めてあげます。

 

低学年の子は見様見真似ですが、上級生と同じことが出来たら胸を張ります。

「僕って凄い!」



でも命令だと、度々反発し対立が起こります。

「ちゃんとやってよね!」「言われなくてもわかってるよ!」って。



先ほどご紹介した6年生の翔子(仮称)ちゃんは、成長と共に道理に照らしてみることを覚え、それは間違っているのでは?私はこう思う!といった、自分の考えをしっかり持ったお子さんです。

 

一人っ子だと伺ってますが、両親から大切に育てられ、子育て上手のお母さんの思惑通り、自主性を尊重され、その代わりきっちり責任も求められる子育ての中で成長してきたことが感じ取れます。

 

それだけに曲がったことが嫌いで、仲間にも常に目を光らせて、ダラダラとやる気のない子を見るとすぐに「ちゃんとやってよね!」と叱ります。


ちょっとしっかりし過ぎているような気もしますが・・・



一方、命令される側の2年生の川村昭人(あきと・仮称)君、今回のもう一人の主人公です。


同じ一人っ子でも家ではテレビゲームに夢中でお母さんが話し掛けても返事もしないそうです。

 

何もしないから全て親がやってしまう。余計に何もやらなくなる。悪循環ですね。

 

親も無理やり何かさせるよりもしたいことをさせたいということで、あまり厳しくは言わないみたいです。


お母さん曰く「この子にやらせるより私がやった方が早いから」だそうです。

それが子どもの自主性を奪ってしまってるのですが・・・



口うるさい上級生の翔子ちゃんのターゲットになりそうです(笑)


初日、集まった20名の子どもたちを大きな部屋に集め、オリエンテーリングをします。


まず最初に「自己紹介」と思われるかも知れませんが、ここではその前に「自分自身のことを相手にどういう風に見てもらいたいか」を考えてもらいます。

 

自己紹介というと、何を言うか聞いて来ますよね。「何を言ったらいいの?」って・・・

 

だからあえて「自分がどういう人なのか教えてあげて下さい」って伝えます。


難しい自己表現を伴う課題なので、低学年の子にはスタッフが横について、会話に繋がる質問をします。

 

「〇〇君は友達とは外で遊ぶ?それとも家の中?」「兄弟はいますか?」「お風呂は一人で入るの?」など、自分がどういう生活をしているのか客観視してもらいます。


スタッフのその質問によって子どもたちが自分をどのように自己評価しているのかを知ることと、どういう自分を理想の自分としているのかを探ります。家庭環境も時々話す子もいます。

 

そして、「みんなに何と呼んでもらいたいか」を決めます。

 

普段呼ばれてる呼ばれ方が気に入っている人はそのままで、嫌な人はここでは自由に、好きなように「ニックネーム」を決められます。


「呼んでもらいたいように呼ぶから、自分のこと何と呼んでもらいたいか決めてね」そうするとほとんどの子が新しいニックネームを考えます。

 

いつも呼ばれているのが名前の呼び捨てなので嫌なんだそうです。


昭人君は、親も先生も友達もみんな「あきと!」って呼ぶから嫌ってことで、じゃあ何て呼んで欲しいの?って聞くと「チョッパー」って言ってました。

 

で、首からぶら下げてるネームホルダーを「チョッパー」に書き換えます。

 

他にも、小学生が決めるニックネームですから、ゲームやアニメの主人公や登場人物が沢山います。

 

全員がニックネームを決めたら、そのニックネームに変えた理由を、みんなの前でちゃんと説明してもらいます。

 

ただカッコいいからとか、可愛いからとかはNGって言ってあります。



本名も含め、名前には付けた人から託された願いや思いがあることを教えるためです。

 

自己紹介は、本名、どこから来たのか、いまどんな気持ちか、みんなに呼んでもらいたいニックネームと何故そのニックネームにしたか、本名は何故嫌だったのか?名前にまつわる日常のエピソードなどをみんなの前でシェア(分かち合うこと=シェアリングの略)して頂きます。


ここに時間を掛けるのは、自己開示を伴う発言の場ということで、自分のことを言葉にしてちゃんと伝えるということと、他人の言うことをちゃんと聞くということに目的をおいているからです。


上手く話せない子や低学年の子には、スタッフのサポートが入りますが、基本は自分の考えていることを自分の口でちゃんと話せるようになってもらうために時間を割きます。


こういうシェアリングの時間を設ける時は、上級生から発言してもらったり、誰から発表しますか?って聞いてあげると積極性を刺激します。


普段あまり人前で発言しない低学年のお手本になるのと、何を発言するか考える時間を低学年の子どもたちに十分に取るためでもあります。



昭人君の番になりました。

 

「川村昭人、2年生です・・・」

 

そのあと下を向いて黙ってしまったので、スタッフのお姉さんが傍らでサポートします。

 

「何故、昭人くんは自分の名前じゃなくて他のお名前で呼んでほしかったの?」

 

「あきと!」って呼ばれるとお父さんに怒られてるみたいで、ビクッ!てなるからです。

 

「友達もみんなあきと!って呼ぶから偉そうなので嫌です」

 

「そうだね。呼び捨てにされると偉そうに聞こえるよね」

 

「どうして呼んで欲しい名前をチョッパーにしたの?」

 

「小さいのに強いから。泣き虫なのに負けないから」

 

「ぼくもチョッパーみたいになりたいからです」

 

「そっかあ!じゃあこの合宿でいっぱいいろんなことにチャレンジして強くなれるように一緒に頑張ろうね!」



昭人君のお母さんから事前に聞かされていた家での昭人君は、上述したようにゲームばかりしているそうですが、そうなったのには訳があって、お父さんが口で言うより先に手が出るそうで日常的に暴力をふるう訳ではないのですが、すぐに大きな声を出すので昭人君が委縮して、お父さんと会話したがらず、一人で部屋に籠りがちになったのでゲームを買い与えてしまったそうです。

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強くなりたいと言った昭人君から、抑圧から解放されたいという気持ちが伝わってきたように思いました。



他の子もそれぞれが決めたニックネームに名札を変更し、次はグループ作りです。


事前に提出して頂いたチェックシートで、子どもたちの家での様子や親から見た子どもさんの性格などを参考にして予め決めたグループを発表します。



グループを決める時は、仲良くなれそうな二人はあえて一緒のグループにしません。



出来るだけ自分との違いを認識できるよう上級生と下級生、男子と女子、自分の意見をはっきり言える子と話すのが苦手な子を一緒にします。



そして次にみんなで動画を観て「人間一人ひとりの違い」についてお話をします。

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 出典:金子みすゞ「私とことりと鈴と」



この合宿ではスタッフは子どもたち一人ひとりに出来るだけ寄り添うようにしています。

 

でも、ベタベタさせるのではなく、子どもたちが孤立したり対立しないように注意をして、子ども達に集団生活の過ごし方を教えていくためです。



他人を認めること(他者受容)自分の意見をちゃんと言うこと(自己開示)協力して何かを成し遂げること(協調性)を身に付けられるように促していきます。




これからメインイベントのひとつ、自分たちで森の中に入り、必要な部材を集めに行って、キャンプファイヤーができるように準備をします。

 

いまどきの子どもはキャンプファイヤーなんて知りません。

 

キャンプにも行ったことない子どもが沢山います。

 

勿論必要な部材なんて分かる訳がないのが実状です。

 

そこで写真を見せて「こんなことします!」って言うと歓声が上がります。

 

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 「凄い!火を使うの⁉」「山が燃えたらどうするの?」「怖い~!」「誰が火をつけるの?」と興奮します。子どもたちの反応が面白いです。


みんなでやる「はじめてのキャンプファイヤー」最高に楽しい思い出になるようにスタッフにも気合が入ります。



余談ですが、本当のキャンプファイヤーって、部材集め、組み立て、点火、火から学ぶ、消火、後片付け、などなど、やることが本当に多くて役割分担してみんなで作業しないと出来ないんです。

 

それだけにグループワークとしては効果絶大で、全員一致団結、しかも結果が目に見える、楽しめる、思い出に残る

 

ライターで予め組み立てられたマキの下にある新聞紙に火をつけたら終わりというのは邪道です(笑)

 

さて、森の中に子ども達だけで入るのは危険なので、各グループにスタッフ1人を加えて、一緒に行ってもらいます。

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森への出発前に私から全員に気を付けてもらいたいことを話しました。

 

「キャンプファイヤーの部材ってわかりますか?」

 

当然「わかりませーん!」って答えが返って来ます。

 

「火を勢いよく燃やすためになるべく燃えやすい木や落ち葉、枝など拾って来てください」

 

「ただし、いま生えている木は折ってはいけません。折れてるやつはOKです」

 

「自分の靴が見えなくなるような草むらには入ってはいけません。蛇がいます」

「しかも毒を持っている蛇もいるので、絶対に一人で行動しないようにして下さい」

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すると「森に入りたくない人はどうするんですか?」って、半泣きの顔で昭人君が聞いて来ました。

 

それを隣りで聞いていた翔子ちゃんが昭人君に言いました。

 

「ひよっとしてチョッパーも蛇が苦手なの?」

 

「みんな本当は森の中に入りたくないんだけど、行かないとキャンプファイヤー出来ないから行くんだよ!チョッパーにも一緒に来て欲しいなぁ」

 

昭人君は蛇にビビッて自分がチョッパーだということを忘れてたみたいです(笑)

 

昭人君は小声で言いました。「一緒に行く」

 

翔子ちゃんは優しく頭を撫でて「えらい!さすがチョッパー!」と励ましてくれました。



翔子ちゃんは一人っ子の割りに、姉御肌が功を奏してか、昭人君の扱いがとても上手です。


年の近い子には少し冷たい態度をとる彼女が昭人君には優しく接してくれているように見えます。


まるで本当の姉弟みたいで、見ていてとても微笑ましいです。



無事森の中で部材を拾って来れたので、今度はその部材を使ってスタッフのみんなで火を燃やす薪を組んだ土台を作ります。

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キャンプファイヤーは、アメリカから伝わった儀式的な要素を持ったイベントです。

 

火を囲み仲間と友情を確認し合ったり、みんなで歌を歌ったり、好きな人に告白したりします。

 

最近防火の観点からあまり街の中では行われませんが、昔は文化祭などで必ずと言っていいほど行われていました。


組み立てた薪は、みんなを温かく包み、炎でみんなの笑顔が照らし出されて、とても穏やかな時間になりました。

 

みんなでゲームをしたり唄を歌ったりして楽しく過ごしました。

 

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さて、次の日の朝。

 

起床の時間になったところで、みんなで自分の使った布団やシーツをたたむ時間を設けました。

 

ここ数年、そういうことをちゃんと教える場が減ったからか、自分で使ったものを自分で片づける習慣のない子が多く、心遣いや感謝の気持ちが伝えられないまま成長している子どもが増えているそうです。

 

シーツの折り目を元通りに折る、端をきっちり合わせる、慣れていないと意外と綺麗に畳むのは難しいと思います。

 

途中で適当になって雑になったらやり直しです。

 

手順としては、最初にシーツを全部剥がします。敷布団を3つに折り、掛け布団を畳み、シーツを綺麗に畳んで、枕をその上に置いて終わりです。

 

 

上級生は比較的求めるレベルで畳めるのですが、下級生は初めての体験で途中で投げ出して諦めてしまいます。

 

翔子ちゃんが昭人君のダラダラした嫌そうに作業する態度を見てキレました。

 

「ダラダラしたら誰かがやってくれると思ってるの?誰も手伝ってくれないよ!」

 

「一生懸命頑張ってるなら手伝ってあげたくなるけど、やる気が無い子をどうして手伝わないといけないの?」

 

「みんな頑張ったんだからチョッパーだって出来るでしょ?」

 

またもやチョッパーの名前を出され再度奮起してチャレンジする昭人君ですが、既に自分には出来ないと諦めてしまっているのでどうしても雑になってしまいます。

 

「よし!私が一緒にやってあげるから最後まで諦めないって約束して!」

 

「約束する」

 

一生懸命やってるのに出来ない、自分のふがいなさにイライラしながら半泣きチョッパーは答えました。

 

翔子ちゃんはやり方を口頭で伝えながら指示をするものの、ほとんど昭人君がやっています。

 

「そこをもう少しだけぴったり合わせて畳んでみて!」

 

「そう上手!」

 

私は指示を出す翔子ちゃんを見ていて、普段翔子ちゃんは、お母さんのことをよく見てるんだろうなぁって感じました。

 

6年生にして子育て出来てます。

 

褒められ褒められ昭人君はほぼ自力で綺麗に畳めました。

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「できた!」喜ぶ昭人くん。
 

翔子ちゃんが昭人君を後ろから抱きしめ「よくできたね~」って言ってくれてます。

 

心が温かくなりました。

 

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さあ、朝ご飯の時間です。

この合宿では、食事を自分たちでお皿に盛り付け、ご飯や味噌汁を自分で入れて来て食べるビュッフェスタイルです。

 

当然残すことは許されないので食べる分だけお皿に取るように気を付けています。

 

食事の前に「いただきます」って何故言うのか?その言葉の意味も勉強します。

 

普段お母さんやお父さんが作ってくれた食事を適当に食べていないかどうか振り返り、いま口に入れたものがどうやって作られているのか、しっかり味わって食べることを勉強しました。

 

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まさに食育です。


食事の後片付けも自分たちでやります。

 

自分の食べた分だけでなく、食べ終わった他の人の分の食器を持って行ってあげたり、自分がお水を入れに行った時に周りの人の分まで入れてあげたり、子どもたちにも集団の中での生活が身に付いて来ました。

 

作ってくれた人がいたら「美味しかったです。ご馳走様でした」って言ってお礼を言うことも出来るようになりました。

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明日はいよいよ解散式です。

 

仲良くなったお友達ともお別れです。

 

2泊3日の合宿だったけど初めて家族と離れて生活しました。

 

当たり前の生活が当たり前ではなくて、お父さん、お母さん、学校の先生やお友達、みんながいるから自分の生活が成り立っているということを勉強できたと思います。



最後の解散式では、迎えに来てくれるお父さんやお母さんに手紙を書いて、自分で読んで渡します。



低学年の子ども達は「何を書いたらいいのかわからない」って言う子が多いのですが「自分が伝えたいことを書いてくれたらいいよ」とだけ伝えます。



次の日、昨日と同じように布団を畳んで、朝ご飯を食べて、出発前に合宿施設の方にお礼を言って、お迎えの人たちの待つ解散式の会場へ向かいます。

 

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子ども達はもうすぐ手紙を渡すということに緊張している様子であまり騒ぎません。

 

会場に着くと、子ども達は自分の親を探して見つけるとニッコリ微笑み軽く手を振ります。



まだ親とは離れた場所にいます。



最後の解散式が始まりました。挨拶で私はいつも同じ話をします。

 

この3日間、子ども達は集団生活の中で自分の居場所を見つけ、友達と通じ合い心を開き、共に助け合い、自分とは違う人と一緒に生活をすることの大切さを学びました。

 

自己紹介で自分が呼んで欲しい名前を決めたこと、協力し合ってキャンプファイヤーの準備をしたこと、食事をいただくという意味や作って下さった方に感謝することを学び、今まで当たり前と思っていたことが当たり前じゃなかったことに気づき、離れて初めて家族の大切さに気づきました。

 

この3日間に経験したことと、今までの自分とこれからの自分に向き合い、ご家族の皆さんに「いま伝えたいこと」というタイトルで手紙を書きました。

 

子どもたちのいま考えていることをそのまま受け取ってください。

 

発表を終えたお子さんから順に、ご家族の元にお返ししたいと思いますので、読み終わりましたら壇上にお迎えに来てあげて下さい。


それでは発表して頂きます。

 

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子どもたちの手紙は、楽しかった合宿のことや、今まで何もしなかった自分が仲間と力を合わせて自分たちの手で成功体験を沢山作れたこと、これから家に帰りいろんなことにチャレンジして行きたいということ、初めて親と離れて親の有難さを感じたこと、合宿に参加できた喜びなどが綴られていました。

 

チョッパーこと川村昭人君は、この合宿が相当楽しかったようで、数々の思い出話と、蛇なんて全然怖くなかったこと、布団を自分で畳めて褒められたことなど、多少の自慢話を交えたあと「いままで家の中でゲームしかしてなかったけど、これからは大好きなお父さんとお母さんと一緒にキャンプに行きたいです」と元気に手紙を読んでくれました。



そして最後に読んでもらったのは、終始この合宿を盛り上げてくれていたリーダー格の6年生の翔子ちゃんの手紙でした。

 

〈以下〉


私は最初、両親と離れて寂しかったけど、私以上にお父さんお母さんが寂しそうに涙ぐんでいたのでちょっと恥ずかしくて素直になれませんでした。


この合宿では、知り合った沢山の友達と一緒に、普段家ではできないチャレンジが沢山できてとても楽しかったし、それが出来た時にみんなで喜び合えたことが嬉しかったです。


食事の時にいただきますって何気なく言ってたけど「いただきます」の意味は、自分が生きるために他の動物や植物の命を奪って、その命を頂いているということだと教えてもらいました。


そしてまた、美味しい食材を用意し、一生懸命作って下さった料理が、沢山の人の手から生まれているということも教わりました。

 

これからはもっと感謝して食事を頂きたいと思います。



キャンプファイヤーではみんなで力を合わせて協力することの大切さや、友達の大切さを感じました。

 

火は身体だけじゃなく心も温かくしてくれると思いました。とても楽しかったです。



私がこの合宿で仲良くなったお友達の中に、川村昭人くんという2年生の男の子がいます。

 

私には2年前まで昭人君と同じ年の弟がいましたが、私が4年生の時に交通事故に遭いいなくなりました。

 

弟もワンピースのチョッパーが大好きで家にはまだ弟が大切にしていた物がたくさん残っています。

 

昭人君と同じ年に居なくなったので昭人君を見てると弟が戻って来てくれたような気持ちになりました。


私、姉弟げんかを沢山したことを謝りたくて、でももういなくなってしまったので、ずっと言えなかったんです・・・

 


〈声が詰まり話せなくなる翔子ちゃんに会場から「頑張れ!」の声が掛かる〉

 

だけど、この合宿に来て人に自分の気持ちを伝えることがとても大切なことだと学んで、周りの人と協力して力を合わせて何かをやることが大切なことだと学んで、まだまだ沢山自分には知らないことがあるって感じて、初めて私は弟の分まで頑張ろうって思いました。



お父さんお母さん、今まで生意気なことたくさん言ってごめんね。

 

お母さん、私を産んでくれてありがとう。私お母さんみたいな母親になりたいです。

 

私頑張るから、これからもずっと見守っていてください。



それから、この合宿で仲良くなったお友達とは会えなくなるけど、また一緒に合宿に行きたいです。



最後にお父さんお母さんこの合宿に参加させてくれて嬉しかったです。

どうもありがとう。



和泉翔子




翔子ちゃんが読み終えた時、会場は嗚咽とすすり泣きだけが聞こえて、静まり返ってましたが、一呼吸置いた次の瞬間、今までで一番大きな鳴り止まない拍手が起きました。


足早に壇上にいる翔子ちゃんのもとへ、迎えに来たご両親が駆けつけ翔子ちゃんを抱きしめました。


会場にいた全員が感動で涙が止まりませんでした。



合宿中、翔子ちゃんとはいろんな話をたくさんしましたが、私たちスタッフは誰もこの弟さんの話を知りませんでした。

 

 後から聞いた話ですが、ご両親も翔子ちゃんがその話を人前でするのを初めて聞いたそうです。


翔子ちゃんは弟さんが亡くなった時に「私が両親を元気づけよう」と決めたようで、それだけにご両親の前では弱音を吐けずにいたんだと思います。



合宿に参加したのを機に、強く明るく素直に生きると決心してくれた翔子ちゃんの手紙を、私はいまも忘れられません。




最後までお読みいただき有り難うございました。感謝。

 

漢仁